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【文芸時評1月号】文化が世界の形を決める 早稲田大学教授・石原千秋

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【文芸時評1月号】
文化が世界の形を決める 早稲田大学教授・石原千秋

石原千秋氏 石原千秋氏

 話をぐっと大きくしよう。いま、アメリカでは核兵器の小型化が進められている。もちろん、ミサイルに搭載するのには小さい方がいいからで、したがって北朝鮮も核兵器の小型化には熱心だが、アメリカの場合はほかにも理由がある。いま仮に広島・長崎規模の核兵器を実際に使用したら、いかにアメリカといえども国際社会から強烈な非難をあびることは避けられない。そこで、小型化して使いやすくしようとしているわけだ。使用は内戦を止めるためなどといった「人道的支援」に限るとして、これにもし「人道的核兵器」という名を与えたらどうだろうか。きっと使うだろう。名を与えることはそれを認めることだからだ。そして、名を与えるのは文化の仕事なのである。

 もちろん、文化は不変ではない。テクノロジーによって変質しながら生き延びることもある。写真はデジタル技術によってフィルムを使わなくなっても写真である。これからの映画はコンピューター・グラフィックなしには生き延びられない。そして、文学も電子書籍が一般化しない限り、生き延びられないだろう。文化をあまりに固定的にしてしまうと、民族問題を激烈に引き起こす。人々の共感が得られる限り、時代につれて文化はゆるやかに変化してもいい。

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