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【至誠の人 揖取素彦物語(72)】中村紀雄 「仏法不毛の地に光を」

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【至誠の人 揖取素彦物語(72)】
中村紀雄 「仏法不毛の地に光を」

 二条窪からの手紙

 楫取夫妻が前橋に居を定めて以来、楫取を煩わす事は次々に押し寄せてきた。県庁を強引に前橋に引っ張ったことへの高崎の反発もあったし、慣れない民情の地で新しい事業を進めることには県民の抵抗や反発、無理解もあった。

 楫取は公務のこともなるべく妻に話した。一途な性格の寿はどうすれば夫を支えられるか悩んでいた。

 ある日、二条窪(にじょうくぼ)から1通の手紙が届いた。差出人は清助、三太、五平、おゆり、おかよの連名である。

 「まあ、あの子たち」

 寿の胸に懐かしい一人一人の顔が浮かんだ。あれから10年以上が過ぎた。寿は胸をときめかして封を切った。清助が代表して書く形をとり、候文などではない話し言葉が綴(つづ)られている。

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