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【話の肖像画】作家・原田マハ(5)「作品に会いに行きたくなった」といった読者の感想が最もうれしい

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【話の肖像画】
作家・原田マハ(5)「作品に会いに行きたくなった」といった読者の感想が最もうれしい

ポール・セザンヌ「画家の夫人」1886年頃 Bequest of Robert H.Tannahill ポール・セザンヌ「画家の夫人」1886年頃 Bequest of Robert H.Tannahill

 〈「デトロイト美術館展」(東京・上野の森美術館)に出品されているフランスの画家、セザンヌの「画家の夫人」には、とりわけ強い思い入れがあるという。セザンヌはオルタンス夫人をモデルに繰り返し肖像画を描いている〉

 昔はセザンヌの良さがわからなかったんです。ルノワールのような美しさも、ピカソのような造形の革新的な面白さがあるわけでもない。1990年代にロンドンで見たセザンヌの回顧展にも夫人の肖像画が何点か出ていたのですが、「なぜ笑っていないんだろう」「夫婦間に愛情はあったのかな」などと不思議で。でも何だか憎めない気がして複製画を買い求め、書斎に長らく飾っていたんです。毎日毎日眺めているうちに絵に対する愛着がわいてきて…。画家と夫人の間に通い合う愛情も、徐々に画面から感じられるようになりました。

 セザンヌはモデルに非常に厳しく、「(動かない)りんごになれ」と命令した有名なエピソードがあります。だから誰もが2度目は敬遠するのに対し、オルタンスは何度も何度もポーズを取り、画家の「りんご」であり続けた。でも彼女は世界的に、そして後世に影響を与える「りんご」なのです。

 セザンヌは決して対象を美化して描かない。夫人の肖像も決して美人ではなく、鮮やかな色も使われていない。でも、セザンヌは本質を的確にとらえているのだと気が付いた。以来、セザンヌは私にとって特別な画家になったんです。

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