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【話の肖像画】作家・原田マハ(4)債務返済のため所蔵品を売却したデトロイト…「これは小説に書くに値する、と」

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作家・原田マハ(4)債務返済のため所蔵品を売却したデトロイト…「これは小説に書くに値する、と」

(松本健吾撮影) (松本健吾撮影)

 これまで世界各地の数多くの美術館を訪れてきましたが、デトロイト美術館(DIA)のことは正直、名称くらいしか知らなかったんです。でも昨年、所蔵リストを見たとき、「えっ!」とびっくり。何か一つの意志や美学によって貫かれた、傑作ぞろいのコレクションだと感じたからです。

 米メトロポリタン美術館やニューヨーク近代美術館の例を出すまでもなく、素晴らしいコレクションの背景には、必ず偉大なコレクターと優れたディレクターがいる。DIAの歴史にも、そんな人々がいると直感した。すると所蔵リストのクレジットから、ロバート・タナヒルという一人のコレクターの名が浮かび上がったんです。

 〈デトロイトの百貨店、ハドソンズの創業者一族に生まれたタナヒルは生前からDIAを支援し、死後には自邸にあった550点を超える美術品と、新たな作品購入のための基金を美術館に遺贈した〉

 偉大な近代美術コレクターだった彼が、愛蔵の美術品をDIAに寄贈するまでにどんなドラマがあったのか。小説家の嗅覚で「知りたい」と思いました。

 加えてDIAをめぐっては最近、もう一つ大きなドラマがありました。3年前の市の財政破綻を受け、債務返済のため検討されたのが、最も換金価値が高いとされた所蔵コレクションの売却。元市職員らの年金も払えない状況に陥っていたのです。いわば、市民の年金か、美術品かの“究極の選択”。結果的に美術品売却は免れましたが、市民らがどう動き、決断をしたのかを探りたかった。これは小説に書くに値するすごいドラマだぞ、と。

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