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【話の肖像画】作家・原田マハ(3)「ゲルニカ」のメッセージ

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【話の肖像画】
作家・原田マハ(3)「ゲルニカ」のメッセージ

 〈デビュー10周年の節目に、最も敬愛する芸術家、ピカソとその代表作「ゲルニカ」をテーマに取り組んだのが、今年刊行の「暗幕のゲルニカ」だ。第二次大戦前夜のパリと、米中枢同時テロで傷ついたニューヨークを交差させながら、名画に託されたメッセージや名画をめぐる政治的思惑を追う、スケールの大きな長編小説に仕上げた〉

 「ゲルニカ」(1937年)はスペイン内戦下で起きた空爆の悲劇を、ピカソが怒りを込めて描いた大作です。人類史上、この絵画以前にこれほど強い反戦メッセージを表し、物議を醸した絵画は恐らくなかったのではないか。アートが社会への強いメッセージになり得ることを、「ゲルニカ」は世に知らしめました。

 今もゲルニカの意味は問われ続けている。21世紀に入ってもテロや戦争の脅威、暴力の連鎖が断ち切られることはなく、私たちは完全に袋小路に入ってしまっている。アートは何の抑止力にもならないかもしれない。それでも世の中を変えられると想像をたくましくすることで、負の連鎖を止められるかもしれない-。そんなピカソの思いを、私は今こそ読者と共有したいと思いました。

 執筆にあたり、私はあたかも聖地巡礼のようにピカソゆかりの地を訪れ、取材をしました。ニューヨークとパリ、そしてスペインはマドリード、マラガ、ビルバオ、ゲルニカ、バルセロナ…。そして各都市の美術館学芸員に聞いたんです。「ゲルニカは誰のものですか?」と。すると皆、こう言いました。「うちのものです」。20世紀を代表する名画をめぐってはかつて、水面下の争奪戦があったようです。今はマドリードにあるものの、「ゲルニカ」は後世に残すべき人類共通の文化財といえます。その重みを強く感じた、非常に意義のある旅でした。

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