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デトロイト美術館展・私の一押し 千足伸行氏「異様な赤に事件の予感」 中野京子氏「未来まで透ける肖像画」

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デトロイト美術館展・私の一押し 千足伸行氏「異様な赤に事件の予感」 中野京子氏「未来まで透ける肖像画」

フィンセント・ファン・ゴッホ「自画像」1887年 油彩、板に貼り付けたカンヴァス City of Detroit Purchase フィンセント・ファン・ゴッホ「自画像」1887年 油彩、板に貼り付けたカンヴァス City of Detroit Purchase

 この自画像は黄色い麦わら帽をかぶっていることから、おそらくパリに出て2年目の夏の作品と考えられる。じっとこちらを見つめる目にはゴッホ特有の「目力」が感じられるが、それはまた自分自身を凝視する目でもある。印象派ゆずりの小刻みなタッチと明るい色彩が目立つが、唇とともに耳も異様なまでに赤く塗られ、飛び散った血痕のような赤は帽子の後ろにも見える。

 この後、アルルで起こすことになる耳切り事件をあたかも予告するかのように。

                   

ドイツ文学者・中野京子

 ピカソのベースには確固としたデッサン力がある。幼い時からラファエロのように描けた、と豪語しているが、弱冠15歳で仕上げたアカデミックな宗教画の完成度を見れば誰もが納得する。

 だがそこにとどまる気はみじんもなかった。ピカソは自在にめまぐるしく画法を変え、大胆に何度も世界の美術シーンを切り開き、なおかつ一貫して人々を魅了し続けた。若いころの2、3年の貧窮時代を除いては、生前に売れなかった絵は一枚もないし、死後の評価は下落するどころか上がる一方だ。

 「アルルカンの頭部」は、キュビズムへ移行する少し前の、24歳の作。写実的手法による小型の肖像ながら、ピカソの鋭い人間観察力と絵筆の冴(さ)えが光る。アルルカンとは道化の名前の一つで、この絵のようにひし形模様の衣装を着けて演じる。当時のピカソはサーカスや旅芝居の演者たちに共鳴し、彼らの素顔をくり返し描いた。

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