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吉田修一さん新作「犯罪小説集」 弱さが持つ強さと向き合う

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吉田修一さん新作「犯罪小説集」 弱さが持つ強さと向き合う

収録作のタイトルは「凝っている」という歌舞伎の演目調に。「それらしく劇的な見せ場も意識して書いた」と話す吉田修一さん(山崎冬紘撮影) 収録作のタイトルは「凝っている」という歌舞伎の演目調に。「それらしく劇的な見せ場も意識して書いた」と話す吉田修一さん(山崎冬紘撮影)

 「白球-」では、早崎と犯罪に巻き込まれる男性との友情や早崎の息子の姿も心に残る。犯罪という暗部を凝視することが、短くても確かに存在した幸福な時間、さらには世代をまたいだ生き直しの可能性を明るく照らす。そんな逆説を体現するような祈りにも似た視線が息づく。

 「人の『弱い部分』を割と書いてきたけれど、その『弱さ』を自分ではネガティブに思っていないんですよ。弱いからこそできる人との出会いだってある。それは、弱さのもつ強さ、ですよね。いつもそのあたりに立って小説を書いている気がする」

どう生きるか

 デビューから20年がたっても「何かをやり遂げた感は全くない」。「小説がうまくなる方法が今でも見つからない。結局は自分がどう生きるか、という問題なんだと思うんですよね。といっても正しく生きたって小説家としてつまんないしなあ」とおどける。

 今年公開された『怒り』をはじめ作品の多くが映画化されてきた。撮影現場にもたびたび足を運び、集団の力を結集する映画作りの面白さも知った。その体験が、孤独と向き合って紡ぐ小説の「強さ」を追求する原動力にもなっている。

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