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住宅の消費エネルギー 「正味ゼロ」 ZEH普及が温暖化対策のカギ

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住宅の消費エネルギー 「正味ゼロ」 ZEH普及が温暖化対策のカギ

 日本は、2030年度に温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減する目標を地球温暖化対策計画の中で掲げている。国際的な気候変動対策の枠組みである「パリ協定」に対応する地球温暖化対策として、一般家庭のエネルギー消費を対象とした家庭部門での取り組みがカギとなるのは言うまでもない。核家族化の進行等で世帯数の増加傾向は続いており、節約意識にとどまらない抜本的な解決策が求められている中で、従来よりもより快適な心地よい暮らしを実現しつつ高い省エネ・省CO2効果を発揮する対策の切り札として注目を集めているのがZEH(ゼッチ)だ。環境先進技術に磨きをかける住宅業界は、新築住宅を中心にZEHの普及に本格的に乗り出している。

ZEHの普及には、環境性能とデザイン性の両立が必要だ(積水ハウス提供)

ZEHの普及には、環境性能とデザイン性の両立が必要だ(積水ハウス提供)

 ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、年間のエネルギー消費と生み出すエネルギー(創エネ)との収支が「正味ゼロ以下」になる住宅を指す。この実現を支える三本柱が天井、壁、床、窓の高い断熱性、空調や照明、給湯などの設備の省エネ化、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーを利用した創エネだ。2014年に閣議決定されたエネルギー基本計画では「2020年に標準的な新築住宅でZEHの条件を満たし、2030年には新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」とする政策目標が設定された。住宅各社はこれに沿ってZEHの普及に努めている。

 政府がZEHの普及を促すのは、家庭部門の対策の重要性が高まっていることが背景にある。エネルギー白書2016のエネルギー消費量の内訳をみると、1973年から2014年にかけて製造業を中心とする産業部門では20%減少しているのに対し、第三次産業などのエネルギー消費を対象とした業務他部門は2.4倍に、家庭部門は2.0倍に増加している。特に最終エネルギー消費で14.3%(2014年度)を占める家庭部門は世帯あたりの消費量には歯止めがかかったものの世帯数の増加傾向が続いているため、業務部門と共に抜本的な対策を講じる必要がある。

 2012年からZEHの普及に率先して取り組んできた積水ハウスは、今年の時点で新築契約の70%以上をZEHにしている。これは、当初の見通しを上回るハイペースであったため、2020年に80%まで引き上げる目標の達成に向けて取り組みを加速させている。太陽光発電の大型パネルを屋根に設置するのではなく、瓦一体型のパネルを敷き詰めるというように、エコのために住宅のデザインまで大きく変えなくてよい点が、マイホームを取得する世帯に受け入れられたという。

 「環境対策が儲からないと不景気になったときに経営者はやめたくなる。事業と環境貢献は一対でなければならない」。積水ハウス常務執行役員の石田建一・温暖化防止研究所長は、ZEHの更なる普及のために市場づくりを急ぐ。

ZEHの普及には、環境性能とデザイン性の両立が必要だ(積水ハウス提供)

積水ハウス常務執行役員の石田建一・温暖化防止研究所長

 戸建てのマイホーム需要を中心に成長を始めたZEH市場だが、都市部への普及を加速させるには、賃貸住宅の居住者であっても恩恵を受けられる仕組みづくりが欠かせない。石田氏は太陽光発電システムの設備投資で賃料が割高になっても、省エネ・創エネ効果で光熱費が下がり、居住者の総合的な出費が減る賃貸住宅を増やせないかと考える。「(住宅情報サイトなどで)借りる人が情報に触れて選択肢が増えるようになってほしい。賃料を上げて人気が出るということになれば、『安く建てて高く貸す』を意識するオーナーでもZEHを建てようと考えるだろう」

 目標の達成には既存住宅をZEH化するリノベーション(改修)も不可欠だが、実現には経済的な壁が立ちはだかる。40歳で建てた家を20年後の今、リノベーションしようとすると、費用としてかかる約1000万円のローンを組めない場合もある。

 また、巷でいわれている老後資金3000万円説に基づくと、リノベーション費用を足した4000万円の貯蓄が必要ということになるが、総務省統計局の平成27年家計調査報告によると世帯人員が二人以上で世帯主が60歳以上の世帯のうち、4000万円以上の貯蓄があるのは18.2%。ハードルは低くない。室温の安定化(暖房がないか最小限でも寒くない住宅)が高齢者の健康維持と医療費抑制につながるなどエコ以外の効果もあわせて取り上げるなどの国ぐるみの取組が求められそうだ。

 積水ハウスのような大手ハウスメーカーでは万全の体制でZEH対策に注力しているが、地域密着型の工務店ではどうだろうか。住宅設備メーカーのLIXIL(リクシル)は断熱性の高い樹脂サッシやドアを販売しながら、建築を請け負った中小規模の工務店をサポートしてZEH化を後押ししている。「断熱性の高いサッシを入れながらも、他に不備があったら効果が薄くなる」(リクシル広報)ことを防ぐために、建具と家の作りをトータルで考えたアドバイスを行いZEHなどの省エネ住宅普及に貢献していくという。

 経済産業省が2015年12月に公表したZEHのロードマップでは「中小工務店等のノウハウ確立」は2017年度までとされており、達成までにあと約1年半しかない。地球環境問題は、一企業で対応出来るものではなく、日本の場合、電力の約3割を消費する家庭部門、つまり住宅の省エネ・創エネが大きな影響力を持っており、住宅産業の責任は重大だ。住宅業界全体、さらにオールジャパンで取り組まなければ、温室効果ガスの削減は難しい。

 経済産業省は、ビルの多い都市部では十分に太陽光で発電できないことを考慮し、年間のエネルギー消費を省エネと創エネで75%以上削減している住宅を「Nearly ZEH(ニアリーゼッチ)」と定義してZEHに準ずる扱いをする。またZEHのビル版、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル=ゼブ)の普及を推進し業務部門でも温室効果ガスの削減を目指している。これらに共通するのは、エコのために快適さを犠牲にするのではなく、これまで通り又はより快適な生活や職場環境を構築出来るところだ。ZEHやZEBの普及が進み、住宅や建築物とは当然こういうものだと広く認識されるまでの道のりは平坦ではないが、自分の住まいを考えるときにはもっと大きな“住まい”である地球について考える時期に差しかかっている。(提供 COOL CHOICE/環境省)

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