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【文芸時評12月号】主人公の2類型 早稲田大学教授・石原千秋 

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【文芸時評12月号】
主人公の2類型 早稲田大学教授・石原千秋 

石原千秋さん 石原千秋さん

 「群像新人評論賞」は当選作は「該当なし」で、掲載された「優秀作」2篇はいずれもショボイが、「選評」はいい。「評論は、小説(家)自身が知らないことについて考えること、知らないことをまさに知らないという開放性を損なうことなく書くことであろう」(大澤真幸)、「漱石の作品を批評するとは、見のがされてきた細部をそのなかに見いだし、織りこまれた襞(ひだ)を開いてみせることである」(熊野純彦)と。「小説を読み換える系」の論文や評論の極意を端的に述べている。

 長谷川郁夫「編集者 漱石」(新潮)も期待して読んでいるのだが、すでに知られた文章をつなげて、「無意識の触手が、漱石の胸にすがりつくように伸びたようである」とか「この日、どんな言葉が交されようとも、無意識の触手が静かに絡み合っていたことだろう」といった自己陶酔の極みのような文章で飾っただけ。黒岩比佐子の名著『編集者 国木田独歩の時代』にはるかに及ばない。

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