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【書評】精神科医・星野概念が読む 『明るい夜に出かけて』佐藤多佳子著 これこそ現代の青春小説

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【書評】
精神科医・星野概念が読む 『明るい夜に出かけて』佐藤多佳子著 これこそ現代の青春小説

『明るい夜に出かけて』佐藤多佳子著 (新潮社・1400円+税) 『明るい夜に出かけて』佐藤多佳子著 (新潮社・1400円+税)

 深夜ラジオは特殊だ。現代はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの新しい手段で、自分の居場所を見いだせたような気になる。その中で、深夜ラジオというレトロなメディアをよりどころとする人がいる。そこは、密室的な自分だけの楽しみのようでいて実は、見知らぬ誰かとの連帯感もある。現代的なコミュニケーションに違和感や疎外感を感じた人も明るさを見いだすことができる場所だ。著者は本屋大賞を受賞した『一瞬の風になれ』をはじめ、さまざまな世界を通じて若者の感情の機微を描く名手。本書は深夜ラジオに焦点を当て、実在した番組が物語の軸となる。そのドキュメンタリー性も手伝い、現代の若者特有の孤独や葛藤、そして希望が鮮やかに描かれている。

 主人公は20歳の男性、富山。高校時代からラジオの常連投稿者だったが、SNSが炎上し封印した。大学も休学し、深夜のコンビニバイトに没入する。それでも、富山の楽しみは、深夜ラジオを聞くこと。しかも、実はある番組にだけはラジオネームを変えてこっそり投稿もしていた。彼はバイト先で、“歌い手”として動画投稿を続ける同僚や、同じラジオ番組に投稿している女子高生に出会う。不思議な感覚で繋(つな)がる彼らと、ネット配信やラジオ放送に一喜一憂するうちに、富山は徐々に自分の新たな居場所を感じるようになる。

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