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【書評倶楽部】日本民族の叙事詩、体が熱を帯びるような読書 古美術鑑定家・中島誠之助が読む『謹訳 平家物語(四)』林望著

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日本民族の叙事詩、体が熱を帯びるような読書 古美術鑑定家・中島誠之助が読む『謹訳 平家物語(四)』林望著

中島誠之助さん 中島誠之助さん

 リンボー先生の『謹訳 平家物語』全4巻がついに完結した。ページをめくるのももどかしく感じるほど夢中で読んできたので最後の灌頂巻(かんじょうのまき)を読破した今、しばし呆然(ぼうぜん)としている。

 琵琶法師の語りにも似た現代語訳で、心地よいリズムに乗って、体が熱を帯びるような読書だった。

 たとえば物語冒頭の有名な一文「おごれるものも久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」は「されば、いかに栄華を極め、驕(おご)り高ぶった人であろうとも、永劫(えいごう)その栄を保つことはできぬ」と訳されて、いささかの惑いもない。

 平清盛の専横から説き起こし、嫡男・重盛の円満な人徳をつづる巻一では、漢や唐の故事をひもとき、本朝のありようを語る。後白河法皇の幽閉が発端となり源三位頼政の進言から戦端が開かれてゆく描写は、まるで従軍記者が戦況を送るかのような臨場感と躍動感がある。

 巻二の橋合戦などは芝居の舞台をみるようだ。源頼朝の旗揚げから始まる源平合戦の展開は息もつかせない。熱病で世を去った清盛が瀬戸内の航路整備に貢献したことも記録して公平を期している。

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