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【書評】文筆家・木村衣有子が読む『喫茶とインテリアWEST 喫茶店・洋食店33の物語』 コスパという言葉は忘れ

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【書評】
文筆家・木村衣有子が読む『喫茶とインテリアWEST 喫茶店・洋食店33の物語』 コスパという言葉は忘れ

『喫茶とインテリアWEST 喫茶店・洋食店33の物語』(大福書林) 『喫茶とインテリアWEST 喫茶店・洋食店33の物語』(大福書林)

 少し昔に建てられた喫茶店や洋食店を、中から外から、写真と短文で辿(たど)る。

 温かみをもたらすだけでなくその存在を主張する照明、きっちりと貼られた特注のタイル、ガラスモザイク。ぼってりとして愛嬌(あいきょう)のあるフォントであらわされる『パーラー喫茶ドレミ』や『珈琲るーむ森永』など時代を映した店名、磨かれたショーケースに並ぶメニューのサンプル。

 タイトルに「WEST」とあるとおり、紹介されているのは京阪神と姫路、和歌山にある店だ。十数年前、コーヒーのミニコミを京都で作っていたとき、この本に載っているような、1960、70年代に作られた喫茶店の建築資料集を古本市で求めたのを思い出す。自分は、若い娘から中年女に変わり、店のほうももちろんそれだけ年を重ねているはずなのだが、やっぱり同じように、引き込まれる、見とれる。

 大阪は天王寺『グリル東洋軒』の先代の言葉に、目がとまる。「費用がかかろうが、夢があって世間にないものを作りたかった」。きっとその使命感は、紹介される33軒全てに共通しているものだろう。

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