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【至誠の人 揖取素彦物語(65)】中村紀雄 県令、強引果敢に動く 

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【至誠の人 揖取素彦物語(65)】
中村紀雄 県令、強引果敢に動く 

 寄付額の記録には、次のように24人の名と金額が並ぶ。

 一金壱万円 下村善太郎

 一金参千円 勝山宗三郎

 一金弐千円 市村良平

 一金弐千円 竹内勝蔵

 一金弐千円 江原芳平

 一金 千円 須田伝吉

 一金 千円 勝山源三郎

 以下、一金150円の人までずらりと並ぶ。明治9年(1876)末のことである。たとえ百円といっても、当時としては大変な額であった。前橋の糸商人たちの力、自分たちの町を作るための高い志、その中でも飛びぬけた善太郎の至誠は、人々の心を打った。

 善太郎の胸には、楫取という人物に接し共鳴しあった強い衝撃があった。吉田松陰の名は、上州人善太郎には義のために命を捨てた男として仰ぎ見る存在であった。その妹を妻として維新の回天に重要な役割を果した楫取を群馬に派遣した新政府、その底知れぬ決意の程を善太郎は噛(か)みしめていた。

                  ◇

 前橋城の楫取の執務室に松の枝を揺らして吹きすぎる心地よい風が通っていき、利根の流れが音を響かせていた。

 明治9年の秋のことである。ここで一人の小柄な男が先程から熱弁を振るっていた。

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