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【文芸時評11月号 】芸術の「図」と「地」 早稲田大学教授・石原千秋

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【文芸時評11月号 】
芸術の「図」と「地」 早稲田大学教授・石原千秋

石原千秋氏 石原千秋氏

 ノーベル文学賞がボブ・ディランに決まった。「そういう手があったのか!」と思ってしまった。オッズでは村上春樹もボブ・ディランも上位だったから、まったく予想外ということではなかったが、うまい手を考えたものだ。もし村上春樹の受賞があるなら、みんなもう諦めていて「あれ、村上春樹でもよかったんだ」というような時期ではないかと思っている。だって反戦小説もないし、迫害もされてないからね。

 今月は新人賞がめじろ押しだ。 新潮新人賞は鴻池留衣「二人組み」と古川真人「縫わんばならん」の2作。「二人組み」は「中学生裏日記」のような作品で、優秀だがちょいワルの本間が性的な関心から「坂本ちゃん」をカラオケに誘っては体を触る。それの繰り返しで、ついには教師にばれてお説教されるどうということのない日常系。しかし、最後の英語の時間で二人組になって実際に会話を演じる場面ではこうなる。本間はみんなの前で「坂本ちゃんの口を吸った」うえで「坂本ちゃんの胸をブラウス越しに揉(も)み始める」。ここは「口を吸った」で終わったら通俗、さらに胸を揉み始めるから文学になる。ただそれだけだが、コツは押さえている。

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