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【話の肖像画】写真家・篠山紀信(2)「死といえば、僕は常々、美術館を『作品の死体置き場』と呼んできた」

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【話の肖像画】
写真家・篠山紀信(2)「死といえば、僕は常々、美術館を『作品の死体置き場』と呼んできた」

「快楽の館」2016年 宮島達男の常設展示作品と(C)Kishin Shinoyama 2016 「快楽の館」2016年 宮島達男の常設展示作品と(C)Kishin Shinoyama 2016

 結局使ったモデルは33人、展示作品は77点で全部撮り下ろし。33人が一気に来るわけじゃなくて、入れ代わり立ち代わり。それはそれは忙しい毎日だったけれど、アイデアに行き詰まることはなかった。「場」の力でしょうね。次から次へとイメージが湧いてきて、もっと撮りたい、もっと撮りたい、となった。緩やかにカーブした壁、窓から降り注ぐ自然光、堂々とした庭の大木…。奈良美智さんや森村泰昌さんらの作品を常設展示した小部屋にもすべて、ヌードを入れて新たな作品をつくっちゃった。

 〈苔(こけ)むした裏庭に横たわる女優の壇蜜。受付の横で見事な開脚ジャンプを見せるダンサー。裸の美女たちが館内でたたずみ、戯れ、跳びはねる。まるで白昼夢の世界で、死の匂いすら感じさせる〉

 死はね、僕の作品全編に流れている。夢か現実か、彼女たちは生きているのか、あの世の人なのか…。死といえば、僕は常々、美術館を「作品の死体置き場」と呼んできた。アトリエでつくったものを美術館に持ち込んで飾って、芸術だからありがたく鑑賞しなよという権威的な感じが嫌いでね。もっと見る人を楽しませたい、ワクワクさせたい。写真にはそういう力があると思うんです。

 撮ったものを撮った場所に展示しているのが、この展覧会の一番面白いところ。「自分がいま立っているところに裸の美女たちがいる」という入れ子のような、不思議な感覚が味わえます。しかも撮り下ろしだから、死体じゃなくて生まれたての赤ん坊みたいなもの。とにかく圧倒的にエキサイティングな10日間だった。誰が一番快楽を感じたかというと、撮った僕なんじゃないかな。(聞き手 黒沢綾子)

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