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【至誠の人 揖取素彦物語(62)】中村紀雄 兄の「最期」を説く

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【至誠の人 揖取素彦物語(62)】
中村紀雄 兄の「最期」を説く

 寿の法話

 寿は受刑者の前に正座して頭を下げて言った。

 「阿弥陀さまの弟子の寿と申します。今日は、御仏のご縁で、皆様にお話できること、ありがたく嬉(うれ)しく存じております」

 寿の姿は県令夫人でなく一介の女信者であることを示そうとしていた。早くも目頭を拭う者がいた。

 寿は意外にも吉田松陰を語り出した。

 「兄吉田松陰は黒船に乗り込み、アメリカ行きを必死で頼みましたが聞き入れられず、獄に繋(つな)がれることになりました。江戸伝馬町の獄に次いで萩の野山獄です。兄は同囚の人に学問を語り、また兄の考えを話しました。私は今、ここで兄の姿を想像いたします。兄も心の底に阿弥陀さまを持っておりました。それは、同囚の方々に伝わったに違いありません。兄は学問の形で阿弥陀さまの教えを伝えたと信じます」

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