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【書評】文芸評論家・北上次郎が読む『絶滅鳥ドードーを追い求めた男』村上紀史郎著 徳川慶喜の孫の波乱の生涯

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【書評】
文芸評論家・北上次郎が読む『絶滅鳥ドードーを追い求めた男』村上紀史郎著 徳川慶喜の孫の波乱の生涯

 最後の将軍・徳川慶喜の孫にして、阿波徳島藩16代当主・蜂須賀正氏の波乱に満ちた生涯を描くノンフィクションである。

 明治36年に生まれ、大正昭和を生きたこの人物は、「不思議の国のアリス」にも登場する絶滅した鳥ドードーを追い求めた鳥類学者であり、日本人として初めてゴリラと出合った動物学者であり、日本初のプライベート飛行機の所有者兼パイロットであり、フィリピンとアフリカを探検した冒険家でもあった。

 それらの、それぞれのエピソードが色彩感豊かに描かれるので、なかなか興味深い。面白いので読み始めるとやめられなくなる。ヨーロッパ滞在が長いために西欧に知己が多かったが(大英博物館に研究室がある研究員でもあった)、日本ではあまり知られていなかった、というのも伝説を盛り上げている。

 たとえば、ベルギー政府のアフリカ探検隊に同行した1930年のコンゴ旅では、大英博物館の要望に応えてゴリラの巣を持ち帰るが、その28年後に同じルートでアフリカに入ってゴリラを観察した今西錦司はその著書『ゴリラ』で蜂須賀正氏の調査についてまったく触れていないという。今西錦司は蜂須賀正氏の調査についてまったく知らなかったらしい。鳥類学に関係する範囲では日本でも知られていたが、それ以外のところでは蜂須賀正氏が無名であったということだろう。これは蜂須賀正氏の立ち位置を示す象徴的な挿話といっていい。

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