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【至誠の人 揖取素彦物語(61)】中村紀雄 「奥さまの話が聞きてえ」

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【至誠の人 揖取素彦物語(61)】
中村紀雄 「奥さまの話が聞きてえ」

 「理屈では分からねえが、俺が心を感じるようになったことが、その証拠と思っていいのですね。これが信心というものでごぜえますか。ありがてえことでごぜえます」

 ナムアミダブツと唱名する又蔵の姿は、真人間に他ならなかった。

 又蔵の告白の影響は大きかった。続いて心の体験を話す者が出てきたのだ。

 行薫は、これこそ真の教誨(きょうかい)だと確信した。

 ある時の法話で、楫取県令の奥様は阿弥陀仏の熱心な信者だと話すと、人々の間にざわめきが起きた。その中から意外な声が出た。

 「奥様の話が聞きてえ。何とかなりませんか」

 声の主は栄吉と言って、窃盗、強盗の常習犯だった男である。男は続けた。

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