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【書評】詩人、中原かおりが読む『ハリネズミの願い』トーン・テレヘン著、長山さき訳

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【書評】
詩人、中原かおりが読む『ハリネズミの願い』トーン・テレヘン著、長山さき訳

『ハリネズミの願い』トーン・テレヘン著、長山さき訳(新潮社・1300円+税) 『ハリネズミの願い』トーン・テレヘン著、長山さき訳(新潮社・1300円+税)

 ■孤独か自由かの堂々巡り

 なんとも愛(いと)おしくって抱きしめたい主人公がトゲトゲだらけだったら? しかも本人の悩みがそのトゲだったら?

 ハリネズミが主人公の寓話(ぐうわ)、59のショートストーリーで構成されている。彼は孤独で繊細、そしてとてつもない妄想力の持ち主。

 ある日、どうぶつたちを家に呼ぼうと一念発起する。「ぼくの家にあそびに来るよう、キミたちみんなを招待します」と、手紙を書くそばから考える。「でも、だれも来なくてもだいじょうぶです」

 しかも、それは出すことなく戸棚に仕舞(しま)われる。さらにそこからだ。してもいない招待についてのハリネズミ君の逡巡(しゅんじゅん)が始まる。想像上の訪問者が次々ドアをノックし、または不意にやってくる。

 食料だけが目当てのクマ、自分の話だけをして居座るキリン、何もかも全否定するラクダ、勝手に部屋を改造するビーバーなどなど…。ハリネズミ君の微に入り細に入りの脳内シミュレーションは止まらない。

 だから訪問者が帰るたびに疲労困憊(こんぱい)し、そこには孤独だけが残る。人間社会にもいそうなキャラクターの数々に身もだえし、ハリネズミと自分を重ねては身につまされ、過剰な取り越し苦労に身をよじって笑ってしまう。

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