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母の残した糸の力 志村ふくみ、東京で展覧会

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母の残した糸の力 志村ふくみ、東京で展覧会

「母衣曼荼羅」(2016年) 「母衣曼荼羅」(2016年)

 卒寿を超えてなお現役で活動する染織家の展覧会「志村ふくみ 母衣(ぼろ)への回帰」が、東京の世田谷美術館で開かれている。

 志村ふくみ(91)は紬織(つむぎおり)の人間国宝。滋賀県近江八幡市に生まれ、柳宗悦の民芸思想に影響を受けた母のもとで織物をはじめた。草や木からの自然染料で染めた糸を織りあげた作品は、人々を魅了し昨年、文化勲章を受章している。

 新作の中でひときわ目をひくのが、縦3・8メートルを超えるタペストリー「母衣曼荼羅」だ。志村は「母衣への回帰」と題した文のなかで書く。

 「昔、母が農家の老女にたのんで、短い糸を繋(つな)ぎ合せ、糸玉にしていつか使ってくれるようにと籠や苧桶(おぼけ)にたくさんのこしておいてくれた」

 だが、もったいなくて糸は少しずつしか使えなかったそうだ。ところが年を重ね、自分が「いつまで織れるだろう」と考えるうち、「よし、これからはどんどん使おう」と思い立つ。

 使ってみてはじめてわかったのは、母が残してくれた糸に、予期せぬ力があるということ。「これは私の力ではない」。名もない機織り女性たちの思いが重なった糸。それを弟子や娘と一緒に織り上げたのが、この「曼荼羅」だった。

 土のにおいのしみこんだ母の糸が、志村に新たな使命を吹き込んだ。

 11月6日まで、月曜休。一般1000円。

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