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柳美里さん新刊「ねこのおうち」 東日本大震災…救いのある物語へ

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柳美里さん新刊「ねこのおうち」 東日本大震災…救いのある物語へ

「南相馬で生活する人々と出会い、この人たちに読んでもらいたい小説を書きたいと思った」と話す柳美里さん 「南相馬で生活する人々と出会い、この人たちに読んでもらいたい小説を書きたいと思った」と話す柳美里さん

 自己の内面を見つめる私小説を数多く発表してきた芥川賞作家、柳美里さん(48)の2年ぶりの新刊『ねこのおうち』(河出書房新社)は、切なくも心温まる物語だ。捨て猫と、その子供たちが拾われていった先のそれぞれの「おうち」を舞台にした4編。書き始めたのは8年前だが、東日本大震災で一時中断し、今春完結した。

 柳さんは震災直後から福島県に通い、平成24年からは週1度、南相馬市の臨時災害FM局で地元の人と対談する番組を担当している。商店主や警察、消防、学校の先生や生徒など、これまでに400人以上をインタビュー。昨年4月には、息子の高校入学を機に同市に移住した。本書は震災後に出会った人々に向けて書かれたという。

 「最初は人の心の闇の部分を描こうと思ったが、震災をはさんで変わった。家族を亡くした人や原発事故で避難を余儀なくされた人たちに読んでもらえる、救いのある物語を書きたくなった」

 誕生直後に公園に捨てられたキジ猫ニーコは、おばあさんに助けられ幸せに暮らすものの、ある事情から再び野良猫に。雄猫と出合い6匹の子を産むが、殺虫剤入りの肉団子を食べて死んでしまう。

 残された子猫の飼い主になる登場人物は、いずれも欠落した何かを抱える。猫の殺処分を余儀なくされる保健所の職員や、毒入り団子で死なせるのは忍びないと野良猫を餌付けする人も。猫との向き合い方に正解はない。誰もが矛盾を抱えながら生きるのは、現実世界と同じだ。

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