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【くらしナビ】歯科訪問診療、機器進歩で広がり

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歯科訪問診療、機器進歩で広がり

高齢者の訪問歯科診療を行う寺本浩平さん(左) 高齢者の訪問歯科診療を行う寺本浩平さん(左)

 歯医者に通うのが困難なお年寄りの口腔(こうくう)ケアを担う「訪問歯科」の重要度が増している。かんだり飲み込んだりする機能が低下して治療を必要としながら、足腰が弱ったなどの理由で通院できない患者も多いためだ。口腔機能の回復によって寝たきりの高齢者を減らすことにもつながるという。(武田範夫)

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 「大丈夫ですよ。お口、開けてくださいね」

 寺本内科・歯科クリニック(東京都文京区)理事長で歯科医の寺本浩平さんは、持ち運びできる歯科用の治療機器を軽乗用車に積み込み、クリニックでの診療の合間に都内の老人介護施設などを往診する。

 訪問先の施設では、入れ歯の調整や虫歯の治療、飲み込む能力の判定などと多様な診療を行う。寺本さんは「高齢者の口腔機能を維持することは生活の質を高め、健康寿命を延ばすためにも極めて重要だ」と説く。

 訪問診療をする歯科医は徐々に増えてきたとはいえ、全体的にみるとまだまだ少ない。その背景には、通常の診療とは患者の状態が大きく異なることがある。訪問診療の場合、認知症や脳卒中の後遺症などを患っている高齢者もいるため「まず症状を聞き出すなどコミュニケーションを円滑にするところから始めなければならない」(寺本さん)。

 このため、歯医者に通えない高齢者の口腔ケアもおろそかになっている。

 厚生労働省の助成を受けた新潟大学などの調査によると、要介護者の実に74.2%が何らかの歯科治療が必要とされる人たちだという。このうち実際に治療を受けたのは、およそ4人に1人に当たる26.9%でしかなかった。

 問題なのは、こうした高齢者の日常的な口腔ケアが手薄になると、結果的に要介護者を増やしてしまうことだ。食べたり会話をしたりする口腔機能が低下すると、病気にかかりやすくなり、認知症の引き金になる恐れもあるとされる。

 最近では訪問歯科診療が広がりそうな動きも出ている。一つは保険診療の料金である診療報酬の改定。高齢者の歯科治療の重要性を踏まえ、訪問診療をした際の報酬の引き上げが進んでいる。

 さらに見逃せないのが治療機器の進歩だ。訪問診療の場合、虫歯治療をはじめ全ての口腔ケアに対応できる持ち運び可能なポータブル型のユニット(治療機器セット一式)が必要。かつてのユニットは重くて大きく、準備にも煩わしい作業を要したが、一連の難点を解消したユニットも登場している。

 例えば歯科治療機器製造のナカニシ(栃木県鹿沼市)では、さらに改良を加えて使い勝手を高めたポータブル型の診療ユニット「ビバエース」を今年7月21日に投入する。中西英一社長は「歯科クリニックの診療室と変わらない治療環境をコンパクトに凝縮することができた」と説明する。ポータブル型といっても、虫歯部分の切削や根管(歯の神経・根)治療、超音波による歯石の除去、入れ歯の調整など、あらゆる治療に対応できる器具がセットになっている。

 中西社長は「訪問歯科診療へのニーズはますます高まっていくだろう。だからより優れたユニットを開発していくことが使命だと考えている」と話す。使いやすいユニットが登場することで、訪問歯科診療が広がる可能性がありそうだ。

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