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【書評】産経新聞上級専門委員、気仙英郎が読む『バルチック艦隊ヲ捕捉セヨ 海軍情報部の日露戦争』稲葉千晴著

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【書評】
産経新聞上級専門委員、気仙英郎が読む『バルチック艦隊ヲ捕捉セヨ 海軍情報部の日露戦争』稲葉千晴著

 ■勝利をもたらした情報収集

 日露戦争の新史料と精力的な現地調査から日本の海軍情報部の活躍に光を当てた労作である。

 ロシアのバルチック艦隊を破った日本海海戦に関しては司馬遼太郎の歴史小説「坂の上の雲」をはじめ数多くの書籍が出版されている。

 勝因として挙げられているのは東郷平八郎連合艦隊司令長官の統率力、秋山真之参謀の卓越した作戦、将兵の練度と大砲の命中率の高さなどである。だが、日露戦争後、日露双方の機密情報の開示が不十分だったこともあって、日本の勝因について「学術的に的を射る答えは示されていないのが実情だ」という。

 本書執筆の動機はその答えを導き出すことにある。防衛省に残っていた新発見の史料を読み解き、欧州からアジアに広がるバルチック艦隊の寄港地などを著者自らの足でたどった。特に「海軍軍令部第三班」と呼ばれた海軍情報部の活動に焦点を置いた。そこから浮かび上がったのは、予算に上限を設けず行われた情報収集と、ロシア側の士気低下を促すための外交・謀略に躍起となった日本の姿だ。

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