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【話の肖像画】無酸素登山家・小西浩文(5)「心の持ち方」「可能性」世に伝えたい

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【話の肖像画】
無酸素登山家・小西浩文(5)「心の持ち方」「可能性」世に伝えたい

無酸素登山家・小西浩文(原田成樹撮影) 無酸素登山家・小西浩文(原田成樹撮影)

 登山をするなかで、「心の持ち方」について系統立てて考えるようになりました。山の遭難では食料も食べきらず、衣類も全部着ないで死ぬ人がいる一方で、最後まで希望を持って生還する人もいます。また、8千メートル級の登山家にけがは付きもので、私の周りでも凍傷にかかった人は100人以上いますが、8千メートル峰6座に無酸素登頂した私は、かすり傷一つしていません。これも心の持ち方です。

 運が悪かったというのは、プロの世界の人間のせりふではない。東日本大震災の後、原発事故で電力会社の人が、想定していなかったと言いましたが、それはアマチュアのせりふです。雪崩に遭うのもミス。世の中必ず予兆、前兆があります。運良く凍傷にかからず指を落とさないこともありますが、8千メートルという高さはそれを長い間見過ごしてはくれないのです。

 私は6千メートル峰以上は70回近く挑戦しました。1度のアタックで死ぬ確率は3%と言われるので、死亡率210%、つまり2回死んでいることになります。8千メートル峰全14座登頂のラインホルト・メスナー氏も挑戦は約30回なので1回死んでいる計算になります。たまたま生きているのではない。生き残るべくして生きています。

 実は、1997(平成9)年7月のガッシャーブルムI峰(8068メートル)登頂以降、体の調子が悪くなってきました。無酸素の後遺症なんでしょうね。登山家の多くはピークを過ぎても、登山ガイドや登山用品店などで仕事してどっぷり山の世界に漬かる人が多いですね。でも自分は、これまで己の欲望のために生きてきたので、少しは人のために役に立ちたい。

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