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【石原慎太郎 日本よ、ふたたび】世界はどうなるのだろうか 北極を舞台にした資源収奪戦争、そして温暖化はさらに進み…

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【石原慎太郎 日本よ、ふたたび】
世界はどうなるのだろうか 北極を舞台にした資源収奪戦争、そして温暖化はさらに進み…

 新年早々、これから春たけなわというこの頃にいささか時期尚早と謗(そし)りを受けるかもしれないが、毎年の年末の恒例にどこかの坊さんが一年を振り返って漢字一文で要約してみせるものだが、さて今年一年が過ぎた後年末に何という文字で今年を要約してみせるのだろうか。多分『厄』という一字になりそうな気がしてならない。時間的空間的に矮小(わいしょう)となったこの地球という惑星に今訪れている変化は未曽有なものと思われる。それは長く暗黒だった中世が幾つかの新しい技術の誕生によって文明の資質を変え近世から近代に変質していったのに似て極めて巨(おお)きな変化と思われる。

 その要因の一つは世界規模な戦争の勃発の可能性と、異常気象による大規模な災害の連発だ。この二つの厄介事に相互の強い関連はあるまいが、しかし尚(なお)地球という惑星に棲息(せいそく)する人間たちにとっては致命的なものを感じさせられる。そんな予感の中で私は今からおよそ四十年前に東京のあるホールで聞いた、あのブラックホールの発見者の天才的天文学者ホーキングの講演を思い出させられてならない。講演の後質問が許され専門家が多くまじった聴衆の中から面白い質問が出た。最初の一つはこの宇宙全体の中に地球のように高度な文明を備えた人間に似た生物が棲惻(せいそく)する天体が他にいくつくらいあるだろうかだった。彼は即座にスリーミリオンと答えたものだった。その数に驚いた次の質問者が、ならば何故(なぜ)我々はハリウッドの作るくだらぬ宇宙SF映画などではなしに、それらの惑星からの人間以外の生物の訪問や彼等を運ぶ宇宙船を実際に目にすることがないのだろうかと質(ただ)したらこれも言下に、そうした地球なみの、あるいはそれ以上の技術文明を備えた星は自然の循環が狂ってしまい、宇宙時間からすれば瞬間的にいかなる生物も消滅してしまうからだと答えた。そこで私が挙手して「あなたのいう宇宙時間にくらべれば瞬間的という時間は地球時間では何年ほどのものですか」と質したらこれまた言下に「百年」と彼が答えてくれたものだった。話し手の彼は天才ではあっても神様ではなかろうが、あの時の会話は私にとっては衝動的なものだった。

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