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【私と震災】写真家・畠山直哉さん 大きすぎる出来事に向き合うには

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【私と震災】
写真家・畠山直哉さん 大きすぎる出来事に向き合うには

「気仙町今泉 2012.03.24」 「気仙町今泉 2012.03.24」

 東日本大震災で岩手県陸前高田市の実家を失い、母を亡くした写真家の畠山直哉さん(57)。故郷をテーマにした作品制作は続いている。震災から5年。「忘れちゃいけない、なんて言われなくても、誰も忘れないですよ。だけど、なにがしかの距離のようなものは出てきますよね」。時間の経過による心理的な距離、写真の限界と言葉の限界、表現の可能性…。作品には「これから」を考えるためのヒントが詰まっている。

 〈僕自身の人生を差し出すくらいのことでちょうどいいんじゃないかと思った〉。このほど刊行された作家の大竹昭子さんとの対談集『出来事と写真』(赤々舎)で、畠山さんは震災直後に制作活動に取り組んだときのことをそう振り返っている。

 以来現在に至るまで、故郷と東京を往復しながら撮影を続けている。国内外で展覧会を開き、震災前に撮っていたスナップ写真を中心に編んだ『気仙川』(河出書房新社)と、変貌していく街を記録した『陸前高田 2011-2014』(同)という2冊の写真集も刊行。作品群は注目を集めてきた。

 「以前と撮り方は変わっていません。ただ、写真を選ぶとき、作品にするときの基準が、美学的判断だけではなくなったかもしれない。それは思い出に関係があることで、自分にとって意味がある写真だから入れる、みたいなことですね」

 たとえば、震災翌年に市内で撮影した虹の写真がある。津波に流された実家の跡地からちょうど虹が立ち上がっている。奇跡的なシャッターチャンスで、宗教的な意味さえ感じさせる。ところが、写真集にはそういう説明は一切ない。

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