産経ニュース

【書評】文芸評論家、伊藤氏貴が読む『モナドの領域』筒井康隆著 おなじみパラレルワールドも飛び出す積極的「予定調和」の“推理SF神話”

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【書評】
文芸評論家、伊藤氏貴が読む『モナドの領域』筒井康隆著 おなじみパラレルワールドも飛び出す積極的「予定調和」の“推理SF神話”

【大書評】『モナドの領域』筒井康隆著(新潮社・1400円+税) 【大書評】『モナドの領域』筒井康隆著(新潮社・1400円+税)

 「モナド」とは世界を構成する最小単位としてライプニッツが命名したものだが、理解するのはなかなか難しい。「これ以上分割不能」という意味では「原子(アトム)」に似るが、無生物と心を持つ生物とでモナドは異なる。では、『モナドの領域』とはいかなる意味か。モナドの特徴は、その状態の変化が神による天地創造の時からそれぞれに決められているということで、筒井が創造しようとしたのは、全てが「予定調和」的に整然と進行する世界である。

 河川敷で発見された女の片腕から始まるこのミステリーには、当然謎解きという「予定調和」がある。しかし「神」による解決である点で古典悲劇的で、しかも平行世界まで飛び出す推理SF神話とでも呼ぶべき作品になっている。前衛的な語りの技法も導入され、筒井の方法論の集大成といった趣を見せる。

「ライフ」のランキング