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【書評】音楽ライター、富樫鉄火が読む『クラシック名盤復刻ガイド』松本大輔著 迫力満点の「宣伝文集」

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【書評】
音楽ライター、富樫鉄火が読む『クラシック名盤復刻ガイド』松本大輔著 迫力満点の「宣伝文集」

『クラシック名盤復刻ガイド』松本大輔著(青弓社・1600円+税)

 クラシック輸入CDのネット通販店「アリアCD」の復刻シリーズが、近年、ファンの熱い視線を浴びている。いまでは入手困難となった1940~60年代のSPやLPから、店主(著者)がこれぞと思った名盤を復刻し、会員限定で頒布するものだ。超個性的な名盤揃(ぞろ)いで、クラシックCD収集はこれで十分といいたくなる面白さである。

 本書は、そのシリーズをサイト上で売る際の紹介文をまとめたものだ。初出テキストを加筆修正してはいるが、要するに「宣伝文集」である。そんな本が書評の対象になるのか。これがCDに負けず劣らず、実に面白いのである。面白いどころか、迫力満点の音楽ドキュメントに昇華した「快著」といいたい。

 本書には全部で61枚のCDが紹介されているが、そのすべてにドラマがある。たとえばポーランドのピアニスト、マリラ・ジョナスは、ナチス・ドイツの協力を拒否したため、家族を殺され、クラクフの収容所へ送られる。ところが彼女のファンだった将校の手引きで脱走に成功。ベルリンまで数週間を野宿しながら歩き続け、ブラジル大使館に駆け込んで南米へ逃れる。その後は神経衰弱で演奏から遠ざかるが、ルービンシュタインの助けで奇跡のカムバックを果たして大評判となった。まるで映画のような話だ。そんな彼女の数少ない録音から、店主は愛情を込めてショパンの小品集を復刻した。

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