産経ニュース

【書評】『孤狼の血』柚月裕子著

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【書評】
『孤狼の血』柚月裕子著

 ■熱くカッコイイ悪徳刑事

 〈面子(メンツ)がかかっとる。腹ァ括(くく)ってやっちゃれい!〉。いきなり飛び交うワイルドな広島弁。読者はマル暴捜査の最前線に投げ込まれる。ときは昭和63年。広島県警呉原東署に配属された新人刑事、日岡秀一の視点で描かれていく物語は、男っぽい熱さに満ちたハードボイルド小説だ。

 日岡が仕えることになった上司は、暴力団係の班長・大上章吾。フロント企業の経理担当者が失踪した事件を捜査する大上を手伝うことになるのだが、そのハチャメチャな行動に驚かされる。裏社会の情報を知り尽くしている大上は、極道にも一目置かれる存在。それはいいとして、ヤクザみたいなのは見かけだけじゃなく…。

 〈受賞歴もトップだが、訓戒処分も現役ワースト〉〈服務規律違反、違法行為、不当捜査はしょっちゅうだ〉

 弱みを握って脅迫し、証拠をでっち上げ、怪しげな金を平気で受け取る。特定の組と親しすぎる。「捜査のため」と言われたって、納得できるはずがない。もちろん上層部には厄介者扱い。大上さん、あなたの正義って何ですか?

 〈「わしの正義かァ…そんなもん、ありゃァせんよ」〉

 なぁんて、絡む若造を突き放すキャラクターが痛快。本当にこんなことやってる警察官がいたら即懲戒免職だろうけれど、じつにカッコイイ。よっ、悪徳刑事の鑑(かがみ)(って変かな)。

「ライフ」のランキング