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【ポイント】農村と都会の共生 人材、情報、経済 「対流」重ね循環

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【ポイント】
農村と都会の共生 人材、情報、経済 「対流」重ね循環

 □林美香子・慶応大大学院SDM特任教授

 農村と都会の「共生」が、これからの地方創生では大切だ。

 農業大国フランスの農村も、50年前、若者が都市へ流出し、日本と同じ課題を抱えていた。ド・ゴール政権が「地方自然公園(農村を活性化させるための農業公園)」などを主導し、乗り越えた。自然公園は都会の人には大切な癒やしの場だ。

 イタリアも、例えばトスカーナ地方などに人々が集い、豊かな雰囲気だ。国民が田舎で過ごすことに価値を見いだし、お金も使っている。欧米は農村の多面的機能、環境の素晴らしさを国民にアピールし、国民が理解している。

 日本は、人口の半数が三大都市圏に集中し、都会が肥大化した。ぜひ都会から地方へ足を運んでほしい。対流を重ねることで人材や情報、経済の循環が生まれる。

 農家レストラン、農家民泊、直売所などグリーンツーリズムの広まりはいい兆しだ。中でも、子供の農村体験は期待が高い。畑を初めて歩き、土がふかふかしていると喜ぶ子。きれいな洗いニンジンしか知らず枝に実ると信じていた中学生。北海道長沼町は中高生を年間5千人近く受け入れ、成果を挙げている。

 農村側の工夫にも期待したい。農産物の6次産業化では、自分が作れる物を作ってしまいがち。都会が何を望むか、成功しているところはニーズをつかんでいる。

 愛媛県今治市の直売所「さいさいきて屋」は野菜に加え、しょうゆなど地元加工品も人気だ。カフェなどでの果物をどっさりのせたケーキは、特産物の使用量を増やす発想が都会のニーズに合致した。栃木県茂木町は牧野(まぎの)そばやウメのオーナー制度で成功した。宇都宮市など都会の人が農家と一緒に育てている。都会の人が「いつもごちそうになって申し訳ない」というのをきっかけに、地域の人たちが食堂も作った。すごい住民パワーだ。地方創生の良い事例は枚挙にいとまがない。

 人の知恵も必要だ。成功した地区は商工会と農協の仲がよく、地域が連携している。農家の母親たちの食堂開設を支えるなど女性を応援する風土もある。

 最近、若い世代の農村への関心が高まり、心強い限りだ。バブル崩壊後に大人になり、地道な考え方の親が増えた、と感じる。東日本大震災を経て、食べ物を確保する場として地方の良さに気づいた。

 農家から食べ物を買うことは、農村風景を守り、農村の文化を守り、日本の食文化を守ること。都会にいても、それを担う一人なのだと意識していたい。(談)

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