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【書評】豊川浩一・明治大教授が読む『「ロシア原初年代記」を読む』栗生沢猛夫著 二つの意味で教科書である 

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【書評】
豊川浩一・明治大教授が読む『「ロシア原初年代記」を読む』栗生沢猛夫著 二つの意味で教科書である 

「『ロシア原初年代記』を読む」栗生沢猛夫著(成文社・1万6000円+税)

 本書は9~13世紀に及ぶ古代・中世ロシア、いわゆるキエフ・ルーシの全史である。ロシアの古い名称を意味するルーシとは何かと問いかけ、粘り強くその答えを見いだそうとする執念の書である。著者は『原初年代記』の記述をその時代のありとあらゆる史料に目を配りながら綿密に検討する。そうした作業から浮かび上がるのは、その時々の複雑な国際関係のなかで生き抜こうとする活き活きとした古いロシアの姿である。

 著者はビザンツのみならず、ドイツやスカンジナヴィアなどヨーロッパ地域との関係を重視し、キエフ・ルーシの歴史を従来の「ヴァリャーギからグレキへの道」という南北の交通路を通してみる見方だけではなく、「ドイツからハザールへの道」という東西の交通路を通して考える必要性を提唱する。著者によると、ウラジーミル聖公の時代にキリスト教に改宗したルーシは、東西分裂(「シスマ」)や十字軍によるコンスタンティノープル占領にもかかわらず、キリスト教世界の一員という自覚から西方世界と関係を築き、ヤロスラフ賢公に代表される西方への志向をもっていた。「北の十字軍」によるルーシ攻撃以降、変化が生じはしたものの、キリスト教世界の一員という意識は相変わらず保たれ続けたという。

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