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【書評】論説委員・佐藤好美が読む 『ご飯が食べられなくなったらどうしますか?』

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【書評】
論説委員・佐藤好美が読む 『ご飯が食べられなくなったらどうしますか?』

『ご飯が食べられなくなったらどうしますか?』

家で看取られるためには

 滋賀県東近江市永源寺地区の開業医の著書。添えられた多くの写真が、土地の空気感を伝える。

 「ご飯が食べられなくなったらどうしますか?」「寝たきりになったら病院に行きますか? それとも施設に入りますか?」

 著者は外来でも訪問でも、患者に問う。日頃から「死」を身近に考えてもらうと、患者は自分の気持ちと向き合い、自身の最期を「雄弁に」選び取るという。地域の在宅看取(みと)り率は4~5割に上る。

 家で看取られることは、生を次世代につなぐことだと写真が語る。仏様になった祖母を見つめる少女。孫娘と息を切らせて歌うのを楽しみにする肺気腫の祖父。老いも死も子供たちの日常の中にある。

 独居の認知症の人は飼い犬と一緒に日々の暮らしを継続する。ヘルパーさんが料理し、薬剤師さんが薬を届ける。ご近所さんがそれとなく気にしているから、周囲を歩き回っても「徘徊(はいかい)」と大騒ぎされない。認知症でも末期がんでも家で暮らし、家で逝けるのは、地域のかかわりがあるからだ。発熱の独居女性の様子見に訪れるご近所さん、買い物につきあい、認知症の人の話に耳を傾けるボランティアさん。お参りにやってくる「ごえん(住職)さん」が生き生きと描かれる。

 副題は「永源寺の地域まるごとケア」。4月から本格実施される地域包括ケアシステムの最先端を見るようだ。

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