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【書評】キャスター・草野仁が読む『虹の断片(かけら)』島田明宏著

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【書評】
キャスター・草野仁が読む『虹の断片(かけら)』島田明宏著

『虹の断片(かけら)』

夢を追う美しさと残酷さ

 昭和の初め、盛岡市の北にある厨川(くりやがわ)村に馬に乗って野山を駆け巡る斉藤すみという少女がいた。どんな癖馬も自在に操り馬と話ができる娘っこだと言われていた。

 やがて競馬場で初めて競馬に出合い、騎手という仕事に強い憧れを抱くようになったのは当然な流れであった。男だけのその世界に女が入れるわけはないのだが、比類のない馬を御す技術に感嘆した人たちが競馬サークル入りをおぜん立てしてくれたのだ。ただし姿、形、言葉も行動も女を封印して男として振る舞うようにという条件付きであった。すみは胸に抱いた思いを実現するためにあらゆる無理難題をクリアし、耐えに耐えて騎手試験に合格。

 ところが、この世界での彼女の苦労を知っていた周囲の誰もが祝福してくれたのに、運命の悪戯(いたずら)が最悪の形で彼女に降りかかるのだ。新聞に掲載された心ない記事、そこには「女騎手出現」とあり、「追い込み途端に、猛烈なウインク…」と記されていた。ご丁寧に馬に乗った女性騎手が後ろから追い上げてくる男の騎手に視線を送る一コマ漫画が掲載されていた。

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