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【手帖】名編集者・粕谷さんを偲び150人

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【手帖】
名編集者・粕谷さんを偲び150人

 5月に84歳で亡くなった「中央公論」元編集長で評論家の粕谷一希さんを偲ぶ会が10月31日、東京都千代田区の学士会館で開かれた。作家の塩野七生さんや藤原作弥さん、評論家の山崎正和さんや新保祐司さんら交流があった関係者約150人が集(つど)い、思い出を語り合った。

 粕谷さんの豊富な人脈は昭和20年代後半の東大生時代に始まる。初代内閣安全保障室長を務めた佐々淳行さんは、反全学連の学生勉強会「土曜会」で粕谷さんと知り合った。弊衣破帽に高下駄(たかげた)という旧制一高生スタイルで会を訪ねてきた粕谷さんが、佐々さんに与えた第一印象は強烈だった。「第一声が、『君はものを書くか。書くなら書け。俺が編集してやる』。彼は生まれながらの編集者で、終生編集者であり続けた」

 佐々さんは粕谷さんを「本質的には大変な愛国者で、昭和における人材発掘の才能があった文化人」と評する。大学卒業後、中央公論社に入社し、政治学者の高坂正堯(まさたか)さんや永井陽之助さんら現実主義の論客を多数、世に送り出した。その後も雑誌「東京人」編集長を務め、自らも評論を手がけるなど、晩年まで出版界で腕を振るい続けた。

 9月には『粕谷一希随想集』(全3巻)の刊行が完結。版元である藤原書店の藤原良雄社長は、粕谷さんが亡くなる10日前、第1巻を家に届けた際の様子をこう語った。「もう本を開く力もないほど弱っておられたが、それでも表紙をなで、ニコッと笑われた。本当に本が好きな方でした」

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