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【中高生のための国民の憲法講座】第71講 浜谷英博先生 条約の国内法上の位置づけは?

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【中高生のための国民の憲法講座】
第71講 浜谷英博先生 条約の国内法上の位置づけは?

対日防衛義務にも影響

 たとえば判例法主義のアメリカでは、既存の条約の国内法的効力を、新たな法律の制定で否定することが可能になります。この実態は日米安保条約5条に規定されたアメリカの対日防衛義務にも影響してきます。

 1973年、アメリカで戦争権限法が制定されました。背景として、憲法上議会と大統領に分割規定された戦争権限は、歴史上大統領の権限だけが拡大運用され、海外への米軍派遣に議会の歯止めがかからなかった反省があります。

 したがって同法の内容として、大統領には海外への米軍派遣に際して議会との共同判断が求められ、事前の協議や事後の報告が義務付けられたほか、議会の決議による強制的な米軍の撤退までが盛り込まれました。

 ところが同法の8条には、米軍派遣に関する対外約束について、矛盾した条文が存在します。すなわち同条a項には「海外への米軍派遣の権限を条約から推定してはならない」ことを規定しつつ、同条d項では「既存の条約の規定を変更しない」ことが明記されています。

 つまり対日防衛義務を定めた日米安保条約に従って、有事の日本に米軍が派遣されるか否かはいずれの条文を根拠にするかで決まることになります。時に議会の意向が大統領を拘束しかねません。

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