産経ニュース

【書評】編集者・高崎俊夫が読む『曽根中生自伝 人は名のみの罪の深さよ』(曽根中生著)

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【書評】
編集者・高崎俊夫が読む『曽根中生自伝 人は名のみの罪の深さよ』(曽根中生著)

作品を解くための里程標

 『天使のはらわた 赤い教室』など数々の日活ロマンポルノの傑作を撮った伝説の鬼才・曽根中生監督の自伝である。なぜ伝説かといえば、曽根監督は二十数年前に映画界から失踪し、一時は死亡説も囁(ささや)かれたが、3年前、忽然(こつぜん)と湯布院映画祭に現れたからである。さらには、何たることか、本書が完成する直前、肺炎で急逝してしまったのだ。

 本書は曽根自身による書き下ろしの自伝とインタビューの混交という形式が採られ、その破天荒で有為転変の生涯と絡み合うように、曽根作品特有の禍々(まがまが)しい陰りの魅力が解き明かされていく。母が嫁いだ日に祖母が投身自殺したという奇異なるエピソード、「映画のためなら悪魔と契約してこい」と言われた気がすると述懐する師・鈴木清順との出会い、具流(ぐる)八郎グループ時代の回想も興味深いが、自作解説のあまりに周到な明晰(めいせき)さに却(かえ)って虚を衝(つ)かれる。

「ライフ」のランキング