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【編集者のおすすめ】『私が愛したサムライの娘』鳴神響一著

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【編集者のおすすめ】
『私が愛したサムライの娘』鳴神響一著

『私が愛したサムライの娘』鳴神響一著(角川春樹事務所・1500円+税)

■異文化交流も描く時代小説

 本年も多数の応募の中から、北方謙三氏・今野敏氏・角川春樹、3人の選考により角川春樹小説賞が決定し、受賞作『私が愛したサムライの娘』(受賞時タイトル「蜃気楼(しんきろう)の如く」より改題)が刊行されました。八代将軍・徳川吉宗の治世で幕府転覆を謀る尾張藩主・徳川宗春に仕え暗躍した忍びたちを、力強くも繊細な筆致で描き切った歴史時代小説です。

 吉宗と宗春の確執は周知の事実ですが、その裏で、蘭館医師・ヘンドリックと宗春に仕える女忍び・雪野が運命的に出会い、恋に落ちるまでの二人が描かれます。一方で雪野を支える者として、彼女が幼い頃から兄のように慕ってきた甲賀同心組頭・左内が登場します。雪野の幸せを一番に考え生死を懸けて彼女を守る左内の姿は勇ましく、熱い想(おも)いが伝わってきます。

 本書は日本だけでなくスペインも題材になっており、海外進出を狙う吉宗が描かれますが、その設定を発想した理由に、「吉宗はまだ紀州の殿様だったときに、使い途(みち)のない大きな鯨船を作らせるなど船に対して強いこだわりを持っている。また、江戸時代の日本は鎖国と言いながらも、外国に対して全く関心がなかったわけではない」と鳴神氏は語りました。

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