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【自作再訪】半藤一利さん「日本のいちばん長い日」 歴史の「ウソ」常識で判断

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【自作再訪】
半藤一利さん「日本のいちばん長い日」 歴史の「ウソ」常識で判断

 この本でも何十人という人に取材しましたが、食い違う証言はたくさん出ます。そういうときは、若いころ師事した作家の坂口安吾の「歴史というのは、一つの資料がすべてを語っていることはない。かすかでも別のことを語る資料が残っていたら、その間で何があったかは、常識で判断するしかない」という言葉に従いました。分かりやすい例では、まだ日も出ていない時刻にこんな詳しく見えるわけはないから、この証言は疑わしい、というようなことです。

 《本書の中心となるのは、14日深夜から15日にかけて、降伏に反対する一部の陸軍将校が皇居を一時占拠したクーデター未遂事件(宮城(きゅうじょう)事件)だ。だが主要人物は直後に自決し、生き残った関係者の口も重い》

 「決定版」で、いくつか重要な記述を修正しました。取材を尽くし、押さえるべき部分は押さえたつもりですが、完璧ではない。というのも、この本が舞台化された際、宮城事件に加わった元将校らが公演に招かれていて「今度も出なくてよかった」「出ないよアレは、永久に」と話していたのを聞きとがめ、追及するとはぐらかされたことがありましたから。どうも、まだ何か陸軍関係で明らかになっていない話がある。今となっては聞きようもないし、新資料も出てこないでしょう。そういう意味で、後世の人がもう一度こういう本を書くのは無理だと思いますね。

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