産経ニュース

【翻訳机】日本語との出会い 最大の喜び 青山南(翻訳家、エッセイスト)

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【翻訳机】
日本語との出会い 最大の喜び 青山南(翻訳家、エッセイスト)

 英語の翻訳をしていていつも痛感させられるのは、おのれのヴォキャブラリーの貧しさである。原文の言葉の意味はかなりつかめたものの、それを言い表してくれる日本語が思いつかないときなど、おおいに悶(もだ)える。

 うんうん唸(うな)るが、いつまでもうんうん唸っているだけでは埒(らち)があかないので、うまい訳語が出ていないかと、つぎつぎと英和辞典をひく。意味が知りたいのではない。意味はもうわかっている。うまい訳語が欲しいのだ。

 そして、まあまあいいかな程度の訳語があると、その言葉を、今度は国語辞典で引き、語釈をじっくり読んで、日本語を考える。

 あるいは、英和辞典に出ていた訳語を、日本語の類語辞典で引くときもある。類語にてきとうなものがないか、探し、なければないで、いくつもの類語をじろじろながめながら、日本語を考える。

 こむずかしい日本語の言葉を探しているわけではない。なにか華麗な漢語的なものを求めているわけでもない。ふつうにつかわれている自然な言葉を探している。

 そうやって探している過程で、膨大な数の日本語と出会う。知らなかった言葉がある。知っていたが忘れていた言葉がある。知っていたつもりだったが、すっかり意味を取り違えていた言葉がある。

「ライフ」のランキング