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【書評】『ルリユール』村山早紀著

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【書評】
『ルリユール』村山早紀著

 ■立ち昇っている書籍への愛

 表題の「ルリユール」とはフランス語で造本、製本、装幀(そうてい)のことだ。特に本作りの職人が手作業でつくる、工芸品としての技術をさす場合が多い。イタリアで起こり全ヨーロッパに波及したルネサンスが16世紀にフランスに伝播(でんぱ)したとき、愛書家として知られたジャン・グロリエ(1495~1565年)が積極的に後押しして、国王の熱烈な支持を受け、文化として定着していった。ぼろぼろになった本を修理したり、特別な手作り本をつくったりする仕事としても知られている。

 とはいえ、物語の舞台は現代の日本にある小さな架空の街、風早(かざはや)だ。著者のファンならお馴染(なじ)みだろう。海のそばにあって、いつも潮風が吹いていて、昔からお化けや妖怪がたくさんいて、ついでに猫もたくさんいて、今回は犬もいて、奇跡や不思議がいつどこで起きてもおかしくない土地柄だ。季節は8月の半ば近くで、中学生になったばかりの13歳の少女・瑠璃は、法事に参加するため、多忙な両親と高校生の姉に先んじて、遠く離れたわが家から単身、母方の祖母がひとりで暮らしているこの街にやってきた。

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