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【父の教え】作家・高橋三千綱さん 「自由に生きる」楽しさ示す

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【父の教え】
作家・高橋三千綱さん 「自由に生きる」楽しさ示す

 芥川賞作家、高橋三千綱さん(65)の父、高野三郎さんも作家。大衆小説を書いたり競馬必勝法の本がベストセラーになったりしたが、目指していた純文学で認められることなく、無名作家として生涯を閉じた。

 「親父(おやじ)は3歳上の姉には厳しかったけど、俺のことはほったらかし。勉強しろとかいっさい言わない。そもそも俺に関心あったのかなあ、一人息子なのに。でも、そのおかげで小学生のときから一人で旅に出たり好きなことができたりした」

 小学2年のとき、高野さんから「若いときから稼ぐ方法を身に付けた方がいい」と言われ、児童劇団に入れられる。子役としてラジオ番組などに出演し、毎月1万円近いギャラをもらっていた。当時の大卒初任給と同程度の額だ。

 「その頃、家の家賃5千円は俺が払っていた。親父は『独立採算制だ』なんて言ってたけど、自分は独立してなくてお袋にたかってた。映画を見に一緒に出掛けたときも親父は俺の分のバス代を払わない。車掌さんが怒って追い掛けてくると、『小学生でもこの子は小さいからいいんだ』って。そのくせ映画館に入ると、『お菓子を買え』とお金をくれる。お菓子を買うお金があるならバス代を払えばいいのに。親父の行動を見て学んだことは全くない」

 フリーのジャーナリストを目指していた高橋さんは高校卒業後、米・サンフランシスコ州立大学英語学科創作コースに進学。帰国後、高野さんから同人誌『作家』に参加するよう勧められ、初めて小説を書いた。

 「親父は俺を作家にする気はなかったと思う。俺も最初から作家になりたいと思ったわけではない。ただ、組織に縛られるのは嫌だと思っていた。親父の影響かな。親父は不安定な仕事でお金はなかったけど、時間は自由だった。家に来る編集者も比較的時間は自由だけど、組織の人はつらそうだった。親父を見ていて自由に生きる楽しさ、その空気を吸い込んだ」

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