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【世界史の遺風】(49)ペイシストラトス アナーキー状況を制した僭主

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【世界史の遺風】
(49)ペイシストラトス アナーキー状況を制した僭主

 □東大名誉教授・本村凌二

 今どきの若者はおとなしいという声がある。その裏には、概して青年は反抗的な者と見なされてきた歴史がある。

 今は還暦をすぎた団塊の世代には、若いころプルードンやバクーニンらの唱える無政府主義の理想社会に魅せられた連中も少なくない。だから、無政府状態を意味するアナーキーなる言葉には、どこかしら懐かしい響きがある。

 前8世紀ごろから、ギリシャのポリス(都市国家)は各地に植民活動をくりひろげている。住民人口が増加し、貴族政が動揺すると、敗北した貴族は海外に新天地を求めたからである。それは形をかえてくり返され、アテネではとうとう前6世紀前半には、アルコンとよばれる筆頭執政すら選べない混乱に陥ってしまう。古代ギリシャ語では、否定辞としてア(次が母音の場合アンになる)を付すので、アナーキーの語源となるアン・アルコンつまりアナルコン(アルコン無し)がまかり通った。

 前6世紀半ばの混迷のなかで、名門貴族から出たペイシストラトスは隣国との戦いで武勲をあげたという。政敵に襲われたと称して自ら体を傷つけたともいわれるが、それによって彼は護衛隊を借り受け、貧農や牧人らの下層民を率い、国政の中心地アクロポリスの丘を占拠する。だが、この僭主(せんしゅ)は他の勢力の支持を得られず、数年後には追い出されてしまった。

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