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スペインで進化し続ける乾貴士を支えた、小さな街のサポーターとチームの愛情

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スペインで進化し続ける乾貴士を支えた、小さな街のサポーターとチームの愛情

 では反対に街の人にはどう思われていたのか? 昨冬、ホームスタジアムのイプルアで、サポーターたちは熱く語った。

 「タカシはすごく働き者でいいプレーヤーだ。それにユーモアに溢れているし、タカシがエイバルに来てくれて本当に嬉しい。タカシ、大好き!」(50代男性)

 「真面目な働き者で、人として心から尊敬している。タカシがいることがもはやひとつの現象だね。僕らのアミーゴだよ。スペイン人はもっと彼について語るべきだ」(40代男性)

 「イヌイは世界一だ! 最高にサッカーがうまい! 彼は鮨だってうまく作るだろうな!」(30代男性)

 「ちょっとシャイだけれど、とっても礼儀正しい青年」(ホテル受付のお姉さん)

 「大好き!」という言葉と同じくらいサポーターが口にしたのが、“ Bueno Trabajador(優れた労働者)”というスペイン語だった。労働者を意味する“Trabajador”をサッカー選手に使うことは珍しい。しかし、古くから製鉄業が盛んで労働者が経済を支えてきたエイバルでは、勤勉こそ美徳。“働き者”は最上級の褒め言葉なのだ。

 ひたむきに練習し、ピッチを全力で駆けめぐる小柄な日本人選手の姿に、エイバル市民は惹かれざるを得なかった。

 そんなファンたちが、リーガでもっとも小さいスタジアム、イプルアで乾を見守っていた。スタジアムの収容人数は7083人と、約10万人を収容するバルセロナの本拠地カンプノウの約1/14(ちなみに2017年度の予算はバルセロナの約1/18)。

 実際にイプルアに行ってみると、どの席でもピッチまでの距離が驚くほど近く、迫力満点。ここは全席が特等席だ。アットホームさもあり、エイバルの人たちはお茶の間にいるかのごとくひまわりの種をポリポリ食べながらサッカー観戦をする。もちろん、燃える時はみんなで立ち上がり、ピッチに大きな声援を送る。

 「ファンとの距離が近いので、声がかなり聞こえるんですよ。エイバルは本当にいい人ばかりで、ファンは常に温かい。チームに対してのブーイングはまったくありません。それはなかなか珍しい。自分が試合中にミスした時でもコールをかけてくれたりもします。背中を押してもらっていると、ピッチに立っている時にすごく感じますね。

 だからイプルアでの試合はとてもやりやすいです。カンプノウとかあれはあれで凄いけれど、やっぱりイプルアはいいですね。大好きです」

 筆者はその言葉を、イプルアで行われた2月17日のバルセロナ戦の観客席で実感することとなった。試合が終わる間際の後半43分のこと、バルセロナが2点めを決めて2-0という状況に。普通なら終焉ムードになるところ、なんと観客席からこの日一番の大声援「EIBAR!EIBAR!」というコールが響いたのだった。ため息をつくのでもなく、帰るのでもなく、サポーターは最後まで選手たちを真摯に見守っていたのだ。

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