産経ニュース

仕事量が通常の2.5倍! メカニックデザイナー・大河原邦男氏の仕事論

ニュース

仕事量が通常の2.5倍! メカニックデザイナー・大河原邦男氏の仕事論

更新 okt1701310001
「機動戦士ガンダム」のオープニング映像には、メカニックデザイナーの大河原氏と並んで、キャラクターデザインの安彦良和氏、美術設定の中村光毅氏の名前が出てくる=27日、横浜市 「機動戦士ガンダム」のオープニング映像には、メカニックデザイナーの大河原氏と並んで、キャラクターデザインの安彦良和氏、美術設定の中村光毅氏の名前が出てくる=27日、横浜市

 「タイムボカンシリーズ」や「機動戦士ガンダム」などのメカデザインを手がけ、40年以上にわたり日本アニメの最前線で活躍するメカニックデザイナー、大河原邦男氏。大河原氏は横浜市で27日、「メカニックデザイナーの仕事論~幅広い世代から支持される理由?~」と題した講演を行い、仕事への考え方を語った。クリエイターのみならずビジネスマンにとっても参考になるところもあるようだ。

仕事が来たら即着手

 特徴的だったのが「仕事が来たらすぐ手をつける」スタイルで仕事量をこなすという話だ。通常1本ずつ仕事を受け「受注→作業(思考)→納品」という手順で行いがちだが、大河原氏はイメージを膨らませるより、まず手を動かすことを優先するという。

講演をする大河原邦男氏=27日、横浜市
画像を拡大する
講演をする大河原邦男氏=27日、横浜市フルスクリーンで見る 閉じる

 流れはこうだ。第1の仕事で作業をしているうちに第2の仕事が舞い込んでくる。そうしたら手だけ第2の仕事の作業に移り、頭では第1の仕事について深く考えるようにする。第3の仕事が来たら同じように即着手し、頭では第2の仕事について考えるが、そのうち第1の仕事の考えがまとまるので、第1の仕事の「再作業」に取り掛かり納品まで完了させる。この繰り返しだ。

 普通では2本しかできない期間でも、この方法なら5本の仕事を仕上げられると大河原氏は語った。完全に真似するのは難しいが、常識的な仕事の手順を見直して時短を図ることは有益かもしれない。

アニメ製作は究極の共同作業

 もう一つの特徴はプロに徹する心構えだった。「デザインの良し悪しよりスケジュールを優先」「自分の好みより描きやすさ」。メカデザインの“巨匠”には似つかわしくない言葉にも聞こえる。

 だがその背景には「アニメ製作は究極の共同作業」という考えがある。上流工程であるメカデザインで時間をとってしまうと全体的なスケジュールに影響が出てしまう。自分の好みにこだわってもスタッフが求めているメカと違っていれば元も子もない。相手の事情を読み取り、求められているものを迅速に提供する仕事術はどんな業界でも応用可能だろう。

 個性の強いアニメ製作者とぶつかることもあるのでは? 来場者の質問に大河原氏は「メカに対する感性がまるっきり違う監督さんもいらっしゃる。まあ…我慢です」と苦笑して会場を沸かせ、その上で相手が望むものを提供する訓練が必要だと話した。

ガンタンクは数合わせだった!?

 人気アニメの裏話も飛び出した。「機動戦士ガンダム」では主役メカのガンダムとガンキャノンが先にデザインされ「サンライズは『3』が好き」という理由で個性的な脇役メカ・ガンタンクが追加された話や、「機動戦士ガンダムSEED」で監督がメカデザインの原案を小学生の子供に見せて採用するかどうかを決めていたエピソードなどを大河原氏が披露すると、観客らは大声で笑ったり感心して頷いたりしていた。

「一人では何もできない」

大河原邦男氏=27日、横浜市
画像を拡大する
大河原邦男氏=27日、横浜市フルスクリーンで見る 閉じる

 そして最も印象に残ったのが、自分を支えてくれた人々への感謝の念だった。
 竜の子プロダクション(現タツノコプロ)でメカデザインの仕事に導いてくれた美術課上司の中村光毅氏。サンライズ創業メンバーで社長に就任した山浦栄二氏。そして「(竜の子入社前に)無職だった私と結婚しようと言った妻。一番すごい」。
 他にも大勢の人々の名前を挙げ、「人とのめぐり合わせが大事。その人を裏切らないよう努力する。一人では何もできない。手を差し伸べてくれる人は必ずいる」と語り人生論にも通ずる仕事論の講演を結んだ。

PR