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【学芸員リレーコラム】(2)疾走するイマジネーションに戦慄せよ!

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【学芸員リレーコラム】(2)疾走するイマジネーションに戦慄せよ!

更新 okt1612020001

 個人的な話から始めよう。私は1969年生まれで、大河原邦男が竜の子プロダクション(現・タツノコプロ)へ入社した1972年当時はまだ3歳。リアルタイムでは視聴できなかったが、この頃のTVアニメは頻繁に再放送されていたから、「ガッチャマン」も「ポリマー」も「キャシャーン」も、幼稚園から小学校低学年の頃によく観た。「タイムボカンシリーズ」と共に成長し、「機動戦士ガンダム」には小学5年生の時に再放送で出会っている。「メカニックデザイナー 大河原邦男展」の400点におよぶ作品群が、時系列に並んだ展示順路をたどっていると、自分史がどうしても重なって見えてしまい、懐かしくも甘酸っぱい気分になる。

 とはいえ、当時はアニメ制作行程の何たるかも知らぬただの子供であったし、再放送ゆえの時系列の混乱もあるから、「大河原邦男の仕事」を展示の形でたどることは、意外な発見や新鮮な驚きに満ちている。中でも「ガンダム」から「ダグラム」「ザブングル」「ボトムズ」「レイズナー」と続く、“リアルロボット革命”とでもいうべき一連の仕事には、戦慄すら覚える。

 巨大ロボットから人間っぽい顔を排し、サイズを人間大に近づけていって、「兵器」としての生々しさ、ざらりと舌に残る戦場の苦い味を増していく過程。それをあらためて、大河原邦男という一人の職人(マイスター)が、わずか数年の間に立て続けにこなした仕事として眼前にすると、天空を駆ける龍のように、イマジネーションが猛々しくほとばしったその軌跡が浮かび上がり、観る者をおののかせるのだ。それは、当時の一視聴者としては感じ取り得なかったものである。

 フィルムや各種資料集で見知ったあのデザイン、このイラストを、貴重な肉筆原画で間近に鑑賞できることもさることながら、「大河原邦男の仕事」をそのキャリアの端緒から現在まで、自分の足で一つ一つたどっていけることの新鮮な感動。展覧会でしか味わえない体験がそこにはある。ぜひとも、お見逃しなく。(北九州市漫画ミュージアム 専門研究員 表智之)

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