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【究極のメカデザイン】(下)ファースト・ガンダムで伝えたかった世界観、ガンタンク初期型のデザインに 大河原邦男“最新創作秘話”

インタビュー

【究極のメカデザイン】(下)ファースト・ガンダムで伝えたかった世界観、ガンタンク初期型のデザインに 大河原邦男“最新創作秘話”

更新 okt1605060002
「私はアーティストではなくアルチザン(職人)でありたい」と大河原さんは語った 「私はアーティストではなくアルチザン(職人)でありたい」と大河原さんは語った

 「実は『装甲騎兵ボトムズ』の新作小説の設定画として、新型AT(アーマードトルーパー)を4体、デザインしたんですよ」。滋賀県守山市の佐川美術館で開催中の特別展「メカニックデザイナー 大河原邦男展」(http://www.sagawa-artmuseum.or.jp/ )の会場を訪れた大河原さんが、ボトムズファンを驚かせる新事実を明かした。昨年から今年にかけて4部作で公開される劇場版アニメ「機動戦士ガンダム THE ORIGIN(ジオリジン)」では、盟友でもある原作漫画家の安彦良和さんから、同作に登場するモビルスーツのデザインの依頼を受け、新解釈でデザインしたガンタンク初期型を発表。模型化もされ話題を集めている。「安彦さんとどんなやりとりをしながらモビルスーツの新作は生まれたのか?」。残念ながら同展での展示は叶わなかったが、“ガンダムオリジン創作秘話”を大河原さんが語ってくれた。(戸津井康之)

ガンダムオリジンが生んだリアルな戦車デザイン

劇場版「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」のポスター用イラスト。このリアル兵器のイメージがガンタンク初期型に投入されることに=(C)創通・サンライズ
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劇場版「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」のポスター用イラスト。このリアル兵器のイメージがガンタンク初期型に投入されることに=(C)創通・サンライズフルスクリーンで見る 閉じる

 前回、大河原さんは香港のメーカーによるAT「スコープドッグ」の模型化の話を教えてくれた。新作の模型といえば、ガンダムオリジンのガンタンク初期型の製作秘話も聞かないわけにはいかない。
 アニメ「機動戦士ガンダム」で、アムロやシャアなど登場人物のキャラクターデザインを務めた安彦さんが、長編漫画として発表した「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」。安彦さんがファースト・ガンダムで伝えたかった世界観を、もう一度、漫画で再構築しようと10年がかりで挑んだ大作だ。
 そんな盟友、安彦さんについて大河原さんはこう評する。
 「ファースト・ガンダム当時から彼は優れたアニメーターでした。キャラクターデザイナーだけでなく、作画監督として演出はできるし、メカデザインもできる。そして漫画家となり物語も作り上げている。やはり安彦さんは天才ですよ」
 対して安彦さんも、ファースト・ガンダムの世界を再構築するにあたり、モビルスーツのメカニックデザイナーに大河原さんを指名。オリジン用にデザインしたガンタンク初期型を見て、安彦さんはこう絶賛した。「大河原さん、すごくカッコいいじゃない。これでいいんだよ」と。

ガンタンクのイメージを一新

 ガンタンクとは、ガンダムのような人型ロボットとなる以前の兵器で、上半身がロボット、下半身がキャタピラで走る戦車のような形状をしている。

 ファースト・ガンダムの放送時には、子供向けの玩具化を考慮し、より人型ロボットに近い形状でデザインされ、色も赤・青・白色など派手な塗装だったが、オリジンで大河原さんは、より実戦タイプのリアリティーあふれるデザインに変更。車高は低く、その外観は重厚さを増し、色もモスグレー系の現用戦車のような塗装で、「世界のどこかで実戦配備されていても不思議ではない」凄みを醸し出している。

 「これでいいんだよ!!」。ファースト・ガンダムの時代では、まだ超えることのできなかった限界を打ち破った大河原デザインに安彦さんは思わず、こううなったのだ。

 大河原さんと安彦さんはオリジン開始の際、「モビルスーツって何だろうね?」と話し合ったという。

 アニメ製作のスポンサーである玩具メーカーの意向に沿うよう、ファースト・ガンダムでのメカデザインの作業には様々な制約があった。2人はオリジンでは「そんなスポンサーへのサービスは、はずしてしまおう」と決めたのだ。

 「ガンキャノンはプレ・モビルスーツで、ガンタンクは戦車であってモビルスーツではないでしょう?」。安彦さんのこんな問いかけに大河原さんが出した一つの答えがオリジンで登場するガンタンク初期型だったのだ。

上塗りで新しいメカデザインを!!

 「ファーストガンダム以降、現在まで日本アニメのメカデザインは同じ所をぐるぐると回り、あまり変わっていないのではないかと危惧しています」と大河原さんは取材中、何度も語った。そして、「新しいデザインで過去を上塗りしていくような、そんなアニメの製作環境を一刻も早くつくらなければいけないと考えています」と提言した。

 展示会場を回りながら大河原さんは「私は過去の作品は本当はあまり見たくないんですよ。だって恥ずかしいですから…」とも語っていた。

 過去に執着しないからこそ、ガンダムやザクなどガンダムのプラモデル“ガンプラ”が世界各国で大ヒットし、実物大のガンダムが立つテーマパークが作られるなどメカニックデザイナーとして大成功をおさめた今でも、その栄光に甘んじることなく第一線に立ち、飽くなき探究心をもって新メカに挑み続けることができるのかもしれない。

 今年秋、タイムボカンシリーズの最新作「タイムボカン24」の放送が始まる。敵メカのメカニカルデザイナーに指名されたのが大河原さんだ。

 「第1話のメカのデザインは終わったんですが、実は東京へ帰るまでに第2話のメカを考えないといけないんですよ…」。追われるようなスケジュールを苦にすることなく楽しげに語る大河原さん。創作意欲はまだまだ尽きそうにない。

 オリジン版のガンタンクやタイムボカンの敵メカなど最新の大河原デザインを紹介する展示会も期待したい。「ぜひ将来、開ければいいですね」と大河原さんは意欲を見せた。

 「メカニックデザイナー 大河原邦男展」は滋賀県守山市の佐川美術館で6月16日まで開催。

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