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【鑑賞眼】ヒット映画のミュージカル…東宝「ゴースト」 幽霊が見せる切なく温かい真実

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【鑑賞眼】
ヒット映画のミュージカル…東宝「ゴースト」 幽霊が見せる切なく温かい真実

ゴーストとなったサム(浦井健治)がモリー(咲妃みゆ)を包み込むように抱く(東宝演劇部提供) ゴーストとなったサム(浦井健治)がモリー(咲妃みゆ)を包み込むように抱く(東宝演劇部提供)

 夏は幽霊がつきもの。1990年のヒット映画を基にしたミュージカルの日本初演で、強盗に殺害された銀行員の男が、ゴースト(幽霊)となって恋人を守るラブストーリーがサスペンスタッチに展開する。

 2011年に英国で初演。ダレン・ヤップ演出の日本版は演劇的な仕掛けに工夫があり、テンポよく仕上がっている。

 温厚で誠実な銀行員サム(浦井健治)と陶芸家のモリー(咲妃みゆと秋元才加のダブルキャスト)は恋人同士。2人はサムの同僚カール(平間壮一)の手伝いも得てブルックリンに引っ越してきた。サムが不明朗な口座を発見した日の夜、拳銃強盗に遭い彼は射殺される。その時、幽体分離が起きたのだ。

 サムは、何かを探しにロフトに忍び込んできた殺人犯を追い、住所と名前をつきとめる。それをモリーにどう伝えられるか思い悩む。

 心温まるのは、2人が死別する前の曖昧な気持ちから、互いに相手を思いやる絆を強めていくことだ。サムがモリーのそばにいながら何もできない焦燥感に苛(さいな)まれる場面は切ない。

 幽霊はフィクションだからこそ描ける。演劇は古来、現世と見えない世界とを通じ合わせ、真実を見せるメディアなのだ。

 浦井、咲妃らは役柄を魅力的に演じている。特にインチキ霊能者オダ・メイの森公美子がコミカル。サムの声を奇跡的に聞き取ったことで霊能力が開花するが、サムに翻弄される様が面白く喜劇色を深めている。31日まで、東京都千代田区のシアタークリエ。(演劇評論家 河野孝)

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