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【鑑賞眼】歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」 目を奪われる若手の成長ぶり

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【鑑賞眼】
歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」 目を奪われる若手の成長ぶり

「東海道中膝栗毛」に出演する、左手前から市川團子、松本幸四郎、市川染五郎。奥は市川猿之助 (松竹提供) 「東海道中膝栗毛」に出演する、左手前から市川團子、松本幸四郎、市川染五郎。奥は市川猿之助 (松竹提供)

 3部制が定着した八月納涼歌舞伎。今年は各部、俳優たちの個性にマッチした狂言を立て楽しませた。

 第1部は、歌舞伎と新派が融合したような「花魁草(おいらんそう)」。中村扇雀(せんじゃく)の女郎と中村獅童(しどう)の大部屋役者の悲恋。舞踊「龍虎(りゅうこ)」があって、新作歌舞伎「心中月夜星野屋(しんじゅうつきよのほしのや)」。古典落語を種に市川中車(ちゅうしゃ)(=香川照之)と中村七之助が丁々発止で笑わせる。第3部に「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」の通し。鶴屋南北作の悪の華が主人公(松本幸四郎)を通して凄惨(せいさん)に開花する様子が、役者見物の醍醐味(だいごみ)だ。色悪(二枚目の悪人)の風情が、幸四郎には涼しく極まる。

 特筆は、第2部の「東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)」。わが国の滑稽(こっけい)話の古典だが、平成28年に市川猿之助(えんのすけ)の喜多八(きたはち)、幸四郎(当時、市川染五郎)の弥次郎兵衛(やじろべえ)になって3年連続のお目見え。猿之助が演出も兼ね、毎回荒唐無稽というより漫画風の笑える展開と仕掛けで客席を沸かせる。今回は、喜多八が死んだ設定で幽霊になり、お伊勢参りに付き合う。芯に弥次喜多の友情を据えるが、道中巻き起こる趣向が笑える。獅童、七之助、中車のそれぞれ5役早替わりや、幸四郎・染五郎親子と猿之助・市川團子(だんこ)の4人同時宙乗りを見せるという初の試みだ。次代、次々代を担う若手のかぐわしい成長ぶりにも目を奪われる。染五郎と團子の中学生コンビのほか、その兄世代の中村橋之助、片岡千之助ら。8歳の市川右近の踊りがほほ笑ましい。長唄舞踊「雨乞其角(あまごいきかく)」が付く。27日まで、東京都中央区の歌舞伎座。(劇評家 石井啓夫)

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