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【追悼】津川雅彦さん 愛情あふれる指導に感謝 俳優・奥田瑛二

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【追悼】
津川雅彦さん 愛情あふれる指導に感謝 俳優・奥田瑛二

津川雅彦さんの略歴 津川雅彦さんの略歴

 映画界の大先輩、津川雅彦さんとのお付き合いは、家族ぐるみでもう40年近くになります。私は今、呆然(ぼうぜん)自失の状態です。

 最後にお会いしたのは先月24日で、親しい仲間と食事をしました。津川さんが映画や演技、音楽のお話をとても楽しそうに話すのが印象的で、本当にこの人は役者なんだなと思いました。鼻に(酸素吸入のための)管を付けていましたが、元気そのもので、食欲も旺盛でした。

 俳優、津川さんのすごさといえば、撮影現場での当意即妙な対応力。若い監督や共演者など後輩たちを楽しませ、リラックスさせてくれるありがたいもので、そこには愛情が詰まっていました。

 例えば、真っ先に思い出すのは、私がプロデューサーで、私の長女、安藤桃子(36)が監督、次女の安藤サクラ(32)が主演を務めた介護ヘルパーの奮闘記「0.5ミリ」(平成26年)の撮影現場。

 津川さんには高校生の写真集を万引する元教師という、訳ありのおじいちゃんを演じてもらいました。

 桃子もサクラも、津川さんの貫禄に少し気後れしていたのかもしれません。若い2人の気持ちを敏感に感じ取った津川さんは、「君らがやりたいようにやるんだ。撮りたいように撮りなさい」と声をかけてくれました。そして、「それに僕はついていくから大丈夫だ」と。これはすごいことです。

 もう1つ、この映画で思い出深かったのは、津川さんが4分30秒の間、カメラを回しっぱなしで撮影に挑んだこと。最大の見せ場を熱演してくれました。文句一つ言わず、「よし、そうきたか!」「待ってたぞ!」という感じで演じてくれました。私は思わず涙を流し、カットの声が響いた後、津川さんとハグしました。津川さんはこの役で報知映画賞助演男優賞を受賞しています。

 この撮影を機に、私と津川さんのつきあいは、ますます深くなった気がします。思えばあの撮影の日々は、私たち家族にとって、強い集中力と楽しさが混在した至福の時でした。

 今の日本に、もしかしたら津川さんに続く俳優はいないのではないか。僕の心にぽっかりと大きな穴があきました。でも、それは自力で埋めていくしかありません。もっともっと精進していきたい。そう考えながら、今、四国で別の撮影に臨んでいます。津川さんとは今月、また食事をする約束をしていたのに、もう実現できない。残念でなりません。(談)

                   

 俳優の津川雅彦さんは4日、心不全で死去した。78歳だった。

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