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【鑑賞眼】歌舞伎座「三月大歌舞伎」 “孝玉コンビ”…時が刻む悪の美学

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【鑑賞眼】
歌舞伎座「三月大歌舞伎」 “孝玉コンビ”…時が刻む悪の美学

 長屋暮らしのお六がかつて仕えた大名家の窮地を救うべく、死人(しびと)を利用し、油屋へ金の工面のためゆすりに行く。その日暮らしの小悪人2人でも、義理と人情秤(はかり)にかけりゃ…、やはり恩義が重い時代なのだ。ともに水も滴るイイ男が迷いもなく悪に傾く。玉三郎のあっけらかんとした声色と艶顔、仁左衛門のとぼけた味が透けるすごみ。41年ぶりの両役での顔合わせで、当時、孝夫(=仁左衛門の前名)と玉三郎で“孝玉コンビ”とはやされた際の、美醜合一の衝撃が泰然とした芝居味に変わった。時が刻んだ悪の美学だ。続く舞踊「神田祭」。鳶頭(とびがしら)仁左衛門がちょんと芸者玉三郎の頬をつつく。客席ほあんと和みとける。

 ほかに昼、「国姓爺合戦(こくせんやかっせん)」と「男女(めおと)道成寺」「芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)」。夜の切りに「滝の白糸」。27日まで、東京都中央区の歌舞伎座。(劇評家 石井啓夫)

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